「ため息は幸せからのS.O.S」
昔テレビで、誰かがそんなフレーズを話していた記憶があります。誰の言葉だったか、正確な言い回しだったかは曖昧ですが、妙に覚えています。笑
「ため息をつくと幸せが逃げる」「辛気臭い」など、ため息にはあまり良いイメージがありません。
でも、本当に悪いものなんでしょうか。今回は、身体の側から少し考えてみます。
疲れたときだけでなく、ホッとしたときにも
疲れが溜まると、つい「はぁ〜……」と息が出る。私にも、ため息といえばそんなイメージがあります。
一方、大きな仕事が終わったとき。人前での発表を終えたとき。緊張する場面を、なんとか乗り切ったとき。
そんなときにも「ふぅ〜……」と、大きく息を吐きませんか。
私はこれを、身体が緊張から少し力を抜き始めるサインの一つなのかな、と感じています。
実際、ため息はストレスだけでなく、安堵とも関連して研究されています。自然に出たため息のあと、筋緊張の低下が観察された研究もあります。
ただし、「ため息が出たから、副交感神経が優位になった証拠」とまでは言えません。息一つで、身体の中を全部見抜けるわけではないんですね。
「吐く音」の前に、大きく吸っている
呼吸は、吸うことと吐くことの繰り返しです。
ため息というと吐く音が目立ちますが、生理学でいうため息は、普段より大きな吸気を伴う呼吸。意識していなくても、日常の中で時々起こっています。
しかも、感情を表すだけではありません。
肺の中には、空気の出入りを担う「肺胞」という小さな袋がたくさんあります。ため息の大きな吸気は、肺胞がつぶれたままになるのを防ぎ、肺の広がりやすさを保つ助けになると考えられています。
つまり、もともと身体に備わった呼吸の一つ。全部まとめて「ネガティブな癖」とするには、ちょっと気の毒です。
私たちが「またため息か」と思っている間にも、身体は身体の仕事をしているのかもしれません。
東洋医学では、呼吸と「気」を結びつけて考える
東洋医学では、肺の働きを呼吸や「気」と深く関連づけて考えます。
ここでいう気は、科学的に測れる特定の物質ではありません。「気」って結局なに?でも書いたように、身体の働きを捉えるための言葉です。
私は呼吸を、日常で比較的取り組みやすい「気に働きかける行為」と考えることがあります。
呼吸を変えることで、身体や気分の感じが変わることがある。その身近な感覚から、気という言葉を考えてみる、ということです。肺胞の仕組みと気を、同じものとして説明したいわけではありません。
また、自然に出るため息と、自分で調整する深呼吸や呼吸法は区別したいところです。研究でも、自然なため息と指示されて行う深呼吸では、反応が同じとは限りませんでした。
吐く息を長めにする呼吸法で、気分や呼吸数の変化を調べた研究もあります。ただ、それは「ため息をたくさんつけば健康になる」という話ではありません。
呼吸まで頑張りすぎなくて大丈夫です。
ため息を、自分の状態を見るきっかけに
ため息が出たら、「またやっちゃった。ダメだな」と責める代わりに、少し立ち止まってみる。
「今、緊張していたのかな」
「疲れが溜まっているのかな」
「やっと力が抜けたのかな」
同じため息でも、その前に何があったかで、見え方は変わります。
もちろん、頻繁なため息にはストレスや不安、息苦しさなどが関係する場合もあります。息苦しさ、胸痛、動悸、めまいがあれば「気が滞っているだけ」と自己判断せず、医療機関へ。急な強い胸痛や、話せないほどの呼吸困難は119番など救急対応が必要です。
大仕事のあとに出る「ふぅ〜」は、幸せが逃げる音ではなく、身体が「やっと終わった〜」と言っている音なのかもしれません。
ため息を善悪で決めるより、今の身体に目を向ける。呼吸は、そのための一番身近なサインの一つだと思います。
毎日に、ちょっと東洋医学。


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