私はこれまでの人生で、便秘に悩まされた記憶がほとんどありません。むしろ、どちらかというと、お腹を下しやすい方です。
何か特別な健康法のおかげ、という話ではなく、便の状態にも個人差があるなと感じています。
そんな私ですが、施術では患者さんに便通についてよく聞きます。今日は「どうして鍼灸師がお通じの話をするの?」というお話です。
肩こりの相談なのに、便通まで聞く理由
「毎日、排便はありますか?」
「便は硬いですか、柔らかいですか?」「出しにくさや、残っている感じは?」
最近変わったことがないか、下痢と便秘を繰り返していないかも伺います。
肩の話をしていたのに、急にお腹の話。話題がずいぶん移動しましたね。笑
でも、私には、その人の身体全体を知りたいという理由があります。便通に加えて、食欲、眠り、疲れ、ストレス、冷えや熱の感じ方も合わせて考えます。
少し話しづらい質問だからこそ、理由を伝えて、答えられる範囲でお聞きしたい。便だけで原因や病気が分かるわけではありませんが、施術方針を考える大切な材料なんです。
この考え方は、「鍼灸師って、痛いところだけ見てるわけじゃない」でも書きました。
「四診」と「証」は、情報を組み合わせる考え方
東洋医学では、身体の情報を集める方法を「四診(ししん)」と呼びます。
- 望診:顔色や姿勢、舌の様子などを目で見る。
- 聞診:声や呼吸音、においなどを参考にする。
- 問診:症状、食欲、睡眠、便通、生活などを聞く。
- 切診:身体に触れ、脈やお腹、筋肉の緊張などを確かめる。
舌診は望診、脈診と腹診は切診に含まれます。名前が似ていて、少しややこしいですね。
こうした情報から、その時の心身の状態を東洋医学の考え方で整理したものが「証(しょう)」です。証を判断することを「弁証(べんしょう)」といい、それに応じた方針を考えます。
私は仮説を立て、身体の反応を確かめながら考え直していきます。証は現代医学の病名診断とは異なり、舌や脈だけで病気を特定できるものではありません。
鍼灸の施術の場で、私が血液検査やCTを行えるわけではないからこそ、お話や身体から得られる情報を大切にしています。ただし、四診で検査の役割まで補えるわけではなく、必要なら医療機関での確認を勧めます。
同じ便秘でも、身体の状態は同じとは限らない
便秘は「毎日出ないこと」だけではありません。
回数が少ないほか、硬くて出しにくい、強くいきむ、出したあとも残る感じがある。こうした状態も便秘の特徴です。毎日出なくても、それだけで病的とは限りません。
背景には食物繊維や水分の不足、運動量、便意を我慢する習慣、薬の影響、さまざまな病気などがあります。現代医学でも、生活習慣や服薬、これまでの病歴を確認します。
東洋医学では、伝統的に潤いの不足、冷えや熱、気の巡りなどからも便通を考えます。「津液」の記事で紹介した、身体を潤すという見方にもつながります。
ただし、これは東洋医学的な解釈。冷えや気の滞りが、現代医学的な原因として確認されたという意味ではありません。
「便秘なら全員この方法」と決めず、ほかのサインも一緒に見ることが大切です。
生活の工夫と、受診が必要なサイン
食事に適量の食物繊維を取り入れ、必要な水分をとる。無理なく動き、便意を我慢しない。こうした調整が役立つ場合はあります。
でも、増やせば何でも解決するわけではありません。持病や服薬によって対応は異なるので、治療中なら医療者へ相談を。薬も自己判断で中止しないでください。
血便や肛門からの出血、強い・持続する腹痛、嘔吐、発熱、意図しない体重減少があれば、速やかに受診を。特に強い腹痛や嘔吐があり、ガスも出ない場合は、救急での評価が必要なことがあります。
急な便通の変化や、長引く・悪化する便秘も、セルフケアだけで様子を見ないでください。
身体から届く「大きな便り」
便通について話すのは、少し気が引けるかもしれません。
それでも、私は可能な範囲でいろいろなお話を聞かせていただきたいと思っています。回数だけでなく、いつもとの違いや、本人が困っていることも知りたいんです。
大便・小便とはよく言ったもので、私にとっては身体から届く「大きな便り」。ちょっと言葉遊びも入っていますが。笑
届いた便りに、たまには目を向けてみる。身体全体を知る、身近なきっかけになるかもしれませんね。
毎日に、ちょっと東洋医学。

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