鍼灸師って、痛いところだけ見てるわけじゃない

鍼灸師のひとりごと

「肩が痛いなら、肩に鍼をするんですよね?」

鍼灸師と聞くと、そんな仕事を思い浮かべるかもしれません。もちろん、つらい場所はきちんと見ます。

でも、私にとって鍼灸師という仕事は、もう少し広くて。

人と向き合うこと。そして、人に触れること。

結局は、そこに尽きるのかもしれません。今日は、普段どんなことを考えながら身体を見ているのか、少しお話しします。

「なぜ今日つらい?」を、一緒に考える

肩が痛い。腰が痛い。なんとなく身体がだるい。

そう聞いたとき、私が考えるのは「なぜ、この人の身体に今この症状が出ているんだろう?」ということです。

どんな仕事で、身体をどう使っているのか。眠れているか。食事や運動量はどうか。

家庭や生活環境、ストレス、過去のケガや病気も、関係しているかもしれません。

いろいろな情報を聞きながら、バラバラのパズルのピースを一つずつ置いていく。私の感覚では、そんな作業に少し似ています。

ただ、人の身体には完成図がついていません。箱のふたを見れば正解が分かる、とはいかないんですよね。笑

「もしかすると、これが影響しているのでは?」

そう仮説を立てて施術を組み立て、身体の反応や本人の感覚を確かめながら、考え直していきます。原因を必ず一つに特定できるわけではありません。

以前の「なんとなく疲れる。東洋医学では身体のどこを見る?」でも書きましたが、症状の周りにある暮らしの情報も、大切にしたいんです。

舌や脈、お腹。話しているときの様子も

症状について話を聞く「問診」では、睡眠や食欲、便通、普段の生活なども聞きます。

ほかにも、舌の色や形、苔を見る「舌診」。手首の脈に触れる「脈診」。お腹の張りや緊張などを確かめる「腹診」。

こんなところも、身体を見る手がかりにしています。

表情や声の大きさ、話す速さ、姿勢、動き方などを参考にすることもあります。

緊張しているのかな。今日は元気がなさそうかな。

そんな全体の様子も、情報の一つ。ただし、声や所作だけで性格や病気が分かる、という話ではありません。

一つだけを見て決めつけず、話してくれたことと、身体から感じたことを合わせて考える。そこが大事だと思っています。

「触れる」は、硬さを調べるだけじゃない

身体に触れるときは、筋肉が硬いかどうかだけを確認しているわけではありません。

緊張の仕方、左右の違い、熱感や冷え、動いたときの様子。言葉だけでは拾いきれない情報にも、目を向けています。

とはいえ、触れば何でも分かる、なんてことはありません。

鍼灸だけで判断しようとせず、必要に応じて医療機関で確認してもらうことも大切です。

それから、身体を預けてもらう仕事だということ。

いくらこちらが熱心でも、相手がずっと身構えていたら、安心して受けてもらえませんよね。

何をするのか伝えること。嫌なことや不安を言いやすくすること。

信頼してもらい、安心して施術を受けてもらえることも、技術の一部だと私は考えています。

同じ肩こりでも、同じ人ではない

パソコンを長時間使う人。肉体労働をする人。睡眠不足が続く人。精神的な緊張が強い人。

同じ「肩こり」でも、身体の状態や背景まで同じとは限りません。

だから私にとって鍼灸治療は、基本的に一人ひとりに合わせたオーダーメイドです。

「肩こりだから、このツボ」で話を終わらせず、今日のその人に何が必要なのかを考えたい。

「痛い場所を治す人」というより、「その人の身体を一緒に考える人」でありたいんです。

肩が痛いと言われれば、もちろん肩にも触れます。

でも、その肩がどうして今日つらいのか。

そこまで一緒に考えるのが、私にとっての鍼灸なのかもしれません。

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